書きっぱなしジャーマン

投げっぱなしジャーマンのごとく書き殴った映画鑑賞記録です。

ディストラクション・ベイビーズ

あらすじ

愛媛県のこぢんまりとした港町・三津浜の造船所に2人で生活している芦原泰良(柳楽優弥)と弟の将太(村上虹郎)。けんかばかりしている泰良はある日突然三津浜を後にし、松山の中心街で相手を見つけてはけんかを吹っ掛けていく。そんな彼に興味を抱いた北原裕也(菅田将暉)が近づき、通行人に無差別に暴行を働いた彼らは、奪った車に乗り合わせていた少女・那奈小松菜奈)と一緒に松山市外へ向かい……。

映画『ディストラクション・ベイビーズ』 - シネマトゥデイ

感想

早稲田松竹 2016/10/01〜週の2本立てラインナップ1本目で鑑賞してきました。

とにかくひたすら暴力が描かれます。それもアクション映画のような華麗な攻防とかそいういうものではなく、歓楽街でチンピラ同士が小競合いしてるようなただただ生々しいもみ合い、つかみ合い、殴り合い。 けんかが終わったかと思えばまた別の相手にけんかを吹っ掛けていく様は、悪く言えば同じことの繰り返しなのですが、同じことを繰り返しすぎて「またやってんのかよw」となぜか面白くなってきてしまいました。

柳楽優弥はほんとにほぼセリフがなくて、写っているシーンの8割は歩く、殴る、殴られる、倒れるのどれかしかしていないという。無口で落ち着いている雰囲気は、感情を表に出して喚き散らす北原との対比でかっこよくも写っています。

菅田将暉の役の北原は、自分では何もしないくせに威勢だけはいっちょ前という小悪党的なもの。前半は憎めない感じがあったんですが、繁華街で女性や子供相手に暴力を振るうところから完全に可愛げが失われます。その後の言動はただただ嫌悪感しかわかない。 最後に死ぬ間際に那奈に言われた言葉が、この男のすべてを物語っていると思います。自分がやったことだろ、逃げんなよ。

映画のなかで最も印象的なのは、拉致されて散々な目にあった那奈が運転している車のアクセルを踏み込んで暴走させるシーン。運転する那奈を見て何かを悟った泰良がそっとシートベルトをしめるシーンはめちゃめちゃかっこいいです。

弟の将太は、兄が起こした無差別傷害事件のせいで友人から距離を置かれます。遊び半分でからかいにきた友人たちに鉄パイプ? を片手に反撃しに行くさまは、映画前半で散々見せられた兄のけんかシーンがオーバーラップさせられます。 映画のタイトルの「ディストラクション・ベイビーズ」。ベイビー"ズ" と複数形になっているのはそういうことなんでしょうか。

ラストは厳島神社の喧嘩神輿の様子と並行して警察官を返り討ちにする泰良。喧嘩神輿は泰良がもつ狂気のメタファーなのでしょうか。個人的には映画としてその文化に対して若干批判的にとっているようなスタンスなのかなと感じました。

とにかく狂気に満ちた映画でした。