書きっぱなしジャーマン

投げっぱなしジャーマンのごとく書き殴った映画鑑賞記録です。

君の名は。

あらすじ

1,000年に1度のすい星来訪が、1か月後に迫る日本。山々に囲まれた田舎町に住む女子高生の三葉は、町長である父の選挙運動や、家系の神社の風習などに鬱屈(うっくつ)していた。それゆえに都会への憧れを強く持っていたが、ある日彼女は自分が都会に暮らしている少年になった夢を見る。夢では東京での生活を楽しみながらも、その不思議な感覚に困惑する三葉。一方、東京在住の男子高校生・瀧も自分が田舎町に生活する少女になった夢を見る。やがて、その奇妙な夢を通じて彼らは引き合うようになっていくが……。

映画『君の名は。』 - シネマトゥデイ

感想

絶賛大ヒット中の「君の名は。」新宿バルト 9 で計 2 回見てきたのですが、どちらも平日夕方の回だったにもかかわらずほぼ満席でした。すごいですね。

若い男女の身体が入れ替わってしまうという点がメインで描かれるので必然的にコミカルなシーンが多いのですが、物語の部分もしっかりと見せてくれるし、最後にはいわゆる仲間と力をあわせて困難に立ち向かう展開もあり、エンターテイメントの王道として楽しめる作品なんじゃないかと思います。

瀧と三葉が入れ替わって、それぞれ困惑しながらなんとか生活していくわけですが、瀧が三葉に入れ替わったときに必ずやる、若い男子が女子の身体になったらまあ普通それやるよねみたいな行動とか、男女入れ替わったときのほうが意外と人間関係うまく進められちゃう感じとか、とにかくずっと微笑ましい感じで見てられます。 あとは、三葉が初めて瀧と入れ替わったときに、スマホの通知音だけでやたらびっくりするところ、知らない世界に来て少しのことでも敏感に反応してしまう感じにリアルさがあってよかったです。

映画全体の構成も素晴らしかったです。なんというか、見ている観客側のテンションのコントロールがとてもうまいなと感じました。 例えば、三葉と瀧が互いに入れ替わっているということに気づいてから、入れ替わったときのルールを決めたりして、なんとなくうまくこなせるようになってきたところ。ここで今回主題歌も担当している RADWIMPS の挿入歌にあわせて 2 人の生活の様子が、カットがバンバン変わりながら、セリフも掛け合いみたいにポンポンながれながら描かれるのですが、ここが非常にテンポがよくて見ていて心地よいし、テンションをぐっと引き上げられます。

RADWIMPS の挿入歌が流れるシーンは他にもあるんですが、歌の存在感もありつつ物語の邪魔にもなっていないくて、シーンの推進力を上げるという効果が非常によく出ていたと思います。

あとは中盤、瀧と三葉の入れ替わりがパタンとなくなってから、物語の核心に触れつつシリアスな展開が続くのですが、しばらくして、ついに瀧が再度三葉に入れ替わったというときにやるお約束のあの行動。 それまでの緊張感のある流れから、序盤のフリも効いてストンとオチが決まるので、緊張の糸がフッと切れる感じというのでしょうか、映画館で見た 2 回ともこのシーンは笑いが起きていました。

主役の 2 人以外のキャラクターについても魅力的で、人物像も丁寧に描かれていました。 終盤の住民を避難させる計画なんかは、三葉(瀧に入れ替わっている状態)はともかく、その他のキャラクターが計画に協力する動機づけが、ともすれば唐突過ぎて不自然になりがちなところですが、実際積極的に協力する勅使河原については初めの方からオカルトとか超常現象みたいなのが好きで、割りと自分の境遇に閉塞感も感じているというバックボーンが描かれていたので、ちゃんと行動に説得力がありました。

ひとつだけ注文をつけるとしたらラストについてでしょうか。

かつて深く関わりがあった人でも時間の経過とともにそれが過去のことになってしまうことの寂しさ、そしてそれがいずれ記憶からも薄れていってしまう切なさが、物語の深みに通じていたのではないかと感じていたので、個人的には「秒速5センチメートル」のようなもう少し突き放した展開でもよかったのかなと思っています。

無理やり言いがかりつけてみましたが、終始楽しめるし、かつ感動もできる良作でした。